Larrivee OM-10 QM (小西寛子のギターレビュー)
小西寛子のギターレビュー2回目は、私のメインギターでもある、1997年カナダ製の Larrivée OM-10 Quilted Maple (Flying Eagle) のお話をしましょう。まずその佇まいは私の他のギターと一線を画します。ギター本体のサイドとバックの全面を彩るキルテッド・メイプルは、キルトの名の通り、波紋のように浮き上がる杢が光の加減で揺らめき、まるで生きているかのような存在感を放ちます。
総アバロンの装飾と、ヘッドのFlying Eagleインレイは、工芸品としての価値を強調しながらも決して過剰ではなく、ステージ上や映像から、観る人に確かな品格を与えてくれます。
唯一無二の独特の音色と個性
ローズウッド仕様の私のOM-09と比較すると、このキルテッド・メイプル仕様は音の輪郭が際立っています。低域は「ポン!」と引き締まり、コードを弾いた際には各弦が分離良く響き、重なり合っても濁りはほとんどありません。意外とお腹に来る低音ですが、(勿論スタジオコンソールでのEQはしますが)スタジオマイクで拾う場合もなぜかオーバーレベルになりません。

中域はクリアで前に出てくるため、アルペジオやフィンガースタイルで特に力を発揮します。高域はメイプルならではの輝きがあり、透明感とキラメキが同居しており、まさに「歌うような」倍音を生み出します。
私の場合、エレキギターのようにメロディアスなフレーズをいつも入れていますので結構助かります。
ブレイシングと構造
特筆すべきは、この時期のLarrivéeは独自の シンメトリカル X ブレイシング(非スキャロップ) を採用しており、音のバランスが均質でフラット。どのポジションでも音量差が少なく、録音では扱いやすい特性を持っています。
弾き手にとっては「想像した音がそのまま出る」安心感があり、プレイバックで安心します。わたしはどちらかというと演奏家では無くシンガーソングライティングの人なので、技術は追究する方ではありませんが、心から出したい音を素直に表現できるギターといえます。
歴史性と希少性
今は現代の技術力が加わり、私のOMV-05やOM-09のように素晴らしい品質で、しっかりした「求める音」が容易に出る時代ですが、1990年代半ばから後半にかけてからの Larrivée は「黄金期」とも呼ばれ、工房での高いクラフトマンシップが反映されています。さらにFlying Eagleインレイ入りのOM-10は極めて流通が少なく、なんと、1997年製のクイルテッド・メイプル仕様は、今日ではまず市場で目にすることのない稀少な存在になってしまいました。

他の所有ギターとの比較視点
ご存じの通り、私の公式プロフィールのアコースティックギター使用欄には、Martin D-42やOvation Super Adamasなどの楽器も並んでいます(他にもありますが)。その中でOM-10 Quilted Mapleは、ラグジュアリーな外観とメイプル特有の透明感あるサウンドで、他の深みあるローズ系や335やLPのエレキサウンドと鮮やかな対比を成し、自分の音楽的な表現の幅を広げる役割を担ってきてくれました。
今回ご紹介したLarrivée OM-10 Quilted Maple (Flying Eagle, 1997) は、装飾の美しさと実用的な音響特性を兼ね備えた稀少な一本です。視覚的にも聴覚的にも魅了し、録音の現場では分離感と透明感でその実力を証明してくれます。豪華さと実用性を高次元で融合させた、時代を超えて輝くギターと思えるので、絶対手放せないギターです。

私小西寛子がこのギターを使う楽曲は「Daisy in the Wind」「Lile a White Flower」いずれも私の海外版英語ソングです。日本発売は2025年秋冬ですかね?乞うご期待。
現在このキルテッドメイプルは扱いがあるかどうかわかりませんが、日本代理店の株式会社日本娯楽さんかLarrivee Guitarsに直接お問い合わせください。